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脚本家は、肉が好き。

感情の解放。

投稿日時:2009/05/10(日) 00:06

男は一生に三度泣く。

僕が母親に教わったのは、

・生まれたとき
・親が死んだとき
・天皇陛下が崩御したとき

さすがに天皇陛下の話は、親も笑いながらだった。
僕だってそれは泣かない。

まてまて、それ以前に僕には親が二人いるぞ。
それで三度ではないか。

ネット検索では、娘が嫁に行ったとき、とか、子供が生まれたとき、とか色々あった。

韓国では「国が滅んだとき」というのがあるそうだ。






カフェで珈琲を飲みながら、一冊の本を通読した。

脚本家は、肉が好き。
「感情の解放」ミユキ・ヒラノ


スタニスラフスキー、リー・ストラスバーグ、ゼン・ヒラノの流れを汲む女優さんが書いた、
演劇のメソッド本。

だと思っていたんだけれど、

具体的な方法論はほとんど載ってなくて、

中身は彼女の半生と、人生の啓蒙書だった……。



しかしだ。

そこに書いてある俳優達の努力や、精神的転換、チャレンジ、苦悩などなどは、
読んでいて心が震えた。

役のために己を掘り下げ、幼児期の記憶まで掘り起こし、
それを捕まえて、逃げずに、認識して、そして心と体を解き放つ。

涙を流し、床を殴り、あらん限りの声で叫び、身をよじり、
苦しみ、耐え、暴れる俳優たち。
そこまでしてようやく感情が解放されていくのだ。


ここには、
鬱病で自殺した母親の死を乗り越えた俳優の訓練過程まで出てくる。

そして、
これら訓練によって、深層心理の在り方が転換を起こし、
自分を認め、人生までもが楽しくなっていくという。



けして大げさではないと思う。

脚本家は、肉が好き。

僕自身も演劇という行為を通じて、自分の抑圧しているものと闘ったことがある。

その舞台では、
僕は千秋楽の舞台挨拶で泣き崩れ、
そのまま退場して舞台ソデで慟哭した。

現実世界や他人のことに関してわりと冷ややかに生きていて、
祖父が死のうが女性に振られようが
何があっても泣いたことがなかった僕がだ。

そして泣きながら同時に、
自分が変わっていくのも感じていた。
不思議と、恥ずかしくなかった。

あのときに「感情の解放」ができたからこそ、
今の僕があると言っても過言じゃない。


そしてその後、僕と母親との関係が非常によくなった。

これが何よりも大きい。

(それまで抑圧していた感情をもう取り戻せないというのも、脳の不思議だ)



……そんな色んなことに思いを馳せながらページをめくり、
時には涙を堪えながら読んだ。
(男は泣いちゃいかんからね!僕はあと一回しか泣けないんだし!)



ほとんどの人間は幼少期からずっと感情を抑圧したり隠したりして生きている。

それが社会生活上必要だし、幼少期には自分を守るために必要だった。

しかし俳優はそれを解放しなければならない。
それが仕事だからだ。

いや、感情を解放することでこれほどまでに生き方が変わるのであれば、
普通の人々こそ感情を解き放ち、よりよき己の人生を歩むべきだ。
怖いのなら、一歩前へ進め!

というのが本著の大まかな主旨だ。



この訓練を受けた俳優のほとんどは、
レッスン後に親に会いに行ったという。



僕も勇気を出して一歩前へ進もうと思い、
母親に電話してみた。


そんな母の日。
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