脚本家は、肉が好き。 2009/10/28
タカシヒロセ&ロートレック。
投稿日時:2009/10/28(水) 13:48
青山ボーイズキャバレーの天才画家、
タカシ・ヒロセという人物を作り上げるのに、
読んだ本たち。
この写真は一度紹介したかと思うが、
おかげでずいぶんと絵画に詳しくなった。
思えば僕の処女作というか、糸井重里賞をいただいた作品は、
アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレックがモチーフだった。
ただのロック少年、しかも聴くの専門、
さらには日本人しか聴かなかった、
つまりそれはただの普通の15歳の僕が、
ロートレックなんていう、教科書に載っていない画家を知ったのは、
あの秋の日に、近所の同級生の女の子が、
突然我が家にやって来て、いきなり僕の部屋にまで上がってきて、
ベッドに私服のスカートの裾を翻して座り、
真剣な眼差しと冷たい笑顔を交互に浮かべながら、
ジャズとロートレックについて語り始めたのが切っ掛けだった。
とても美人で有名なコだったし、
僕と彼女とは別の私立中学・高校に通っていたので、
近所と言っても面識はほとんどなく、
学校の帰りにたまに駅で見かける程度で、
どうして突然、彼女が僕に興味を持ったのか、
なぜそこまで積極的だったのか、
当時はさっぱり分からなかった。
今でも分からない。
少女の持つ特有の気質、としか言いようがない。
彼女は15歳にしては大人びていて、
二人っきりで部屋にいると頭がおかしくなりそうだったので、
僕は彼女を海に誘い、砂浜を歩いた。
「彼はムーランルージュで酒を飲み、女を買い、背が低くて足が不自由なのに、ずっと絵を描いていたの。とても素敵じゃない?」
彼女は、波打ち際で美しい顔を浜風に晒しながら、
自慢の黒髪をなびかせて、細くて長い素足で歩いていた。
そこでセックスでもしてれば村上春樹か浜田省吾にでもなれたのだが、
彼女は延々とロートレックの魅力について語り、
僕は無言でそれを聞いていただけだった。
そして、彼女とはそれっきりになった。
もちろん惹かれたが、
好きにはならなかった。
好きになってはいけない、何かあやうい感じが、
当時の彼女には漂っていた。
美しすぎたのだ。
映画「僕らの方程式」の椿のように。
ロートレックのポスターやそれに似た絵画を観ると、
いつもあの長い髪を思い出す。
音楽だけではなく、絵画にも、
そういうチカラがある。
芸術の秋。
そんな記念日。
2009年10月
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